ワークとライフのバランスに優れた企業の「組織パフォーマンス」
- 2016.12.13
政府の推進する「働き方改革」で注目が集まる「ワークライフバランス(仕事と生活の調和)」。前回は『ワークとライフのバランスが図りやすい職場とは』と題し、ワークとライフの相互作用や、企業が取り入れたい事例などをご紹介しました。
3回目となる今回は、ワークとライフのバランスに優れた企業における、組織のパフォーマンスについて取り上げます。
企業がワークライフバランスを推進するメリットは数多い
前回の『ワークとライフのバランスが図りやすい職場とは』でもご紹介した「生産性の向上」のほかにも、ワークライフバランスを推進する「企業側のメリット」には以下のような点が挙げられます。
従業員の心身の健康維持に効果あり
不必要な長時間労働を止め、人間らしい生活を取り戻すことは、心身の健康維持に非常に効果的と言えます。
就労環境が整った職場では、離職率は下がる
従業員にとって、仕事と生活のバランスを自身で選択できる環境は「働きやすい職場」となり、「この会社で働き続けたい」という意欲につながります。従業員が定着すれば採用や教育等にかかるコストを削減することも可能です。
企業イメージにも影響する
労働環境が劣悪で、従業員満足度が低い、いわゆる「ブラック企業」のイメージがつけば、社会的な信用を失いかねません。ワークライフバランスの実現は、社内だけにとどまらず、社外における自社のイメージにも影響を与えることを認識しておく必要があります。
女性活躍推進には、ワークライフバランスが必要不可欠
2016年4月から施行された「女性活躍推進法」。働き方改革の根幹を支える女性活躍にはワークライフバランスの実現が不可欠です。
◎企業に求められる「女性活躍推進」
女性活躍推進法では、301人以上雇用する企業を対象に、以下の取組みを実施するよう義務付けています。
1.自社の女性の活躍状況を把握し、課題分析
2.女性活躍推進に向けた行動計画を策定し、社内への周知とともに管轄労働局への届出
3.外部に向け、自社の女性活躍に関する情報を公開
女性活躍推進には避けては通れない、妊娠出産育児等の「ライフステージの変化」。仕事で成果をあげつつ、生活においても満足のいく生き方を可能にする職場環境は、女性が継続的に活躍するための重要な土壌であり、企業側には仕事両立へ向けた支援が求められています。
◎仕事にやりがいを感じる女性は、ライフステージの変化後も仕事復帰を望む
内閣府が2014年に調査した「ワーク・ライフ・バランスに関する個人・企業調査」によると、第1子妊娠当時の「仕事のやりがい度」が高ければ高いほど、出産後も仕事は続けたいとする女性が増える結果が出ています。つまり、女性が活躍する企業にするためには、ライフステージの変化以前から、「やりがいのある環境」に整えておく必要がある、ということです。「育休や産休の制度はあるのに、なかなか復職しない」と感じている企業は、この点に注意が必要です。
ワークライフバランスが図りやすい企業は優秀な人材を採用しやすい
「会社に人生のすべてを捧げる」。高度成長期やバブル期には、会社に人生を捧げる代わりに、終身雇用や安定した収入が約束されてきました。しかし、いまはそんな時代ではありません。
◎学生の就職観は、ワークライフバランス重視が増加傾向に
マイナビが行った「2017年卒 マイナビ大学生就職意識調査」によると、学生の就職観の1位は「楽しく働きたい」で29.9%、次いで「個人の生活と仕事を両立させたい」が24.5%となっています。注目したいのは、1位の楽しく働きたいが前年比で2.3pt減であるのに対し、2位の生活と仕事の両立は0.4pt増と、わずかながらも増加傾向にある点です。イマドキの学生にとっては、仕事と生活のバランスを保てる企業は魅力的に映ると言えるでしょう。売り手市場の今、優秀な人材が集まらず採用に苦戦している企業は、自社のワークライフバランスを見直してみる必要があるかもしれません。
ワークライフバランスは、組織としてのパフォーマンスに影響する
ワークライフバランスの実現は、従業員・組織それぞれのパフォーマンスにも影響を与えます。
◎ワークとライフ、それぞれが充足することでパフォーマンスが上がる
ワークライフバランスの実現によって生産性が上がり、不必要な長時間労働が解消されれば、従業員の時間と精神に「ゆとり」が生まれます。ゆとりは何をもたらすのでしょうか。課題解決に有効な「新しいアイディアのひらめき」。自己の成長につながる「資格取得やスキルアップへの意欲」。家族とのコミュニケーションが充実することで得られる「仕事への支援や理解」など。どれも従業員のパフォーマンス向上につながります。組織内にパフォーマンスの高い従業員率が上がることで、組織全体のパフォーマンスも向上します。さらに、このような組織は社外にいる人材にとっても魅力的であり、新たな「高パフォーマンス人材」を呼び寄せ、組織をより強固にする「好循環」を作り出します。企業としての成長には、「ワークとライフを充足させることが重要」と言えるでしょう。
企業活動において、優秀な人材は不可欠ですが、ポテンシャルの高さや豊富な経験を持つ人材であれば良いのではありません。人材が最大のパフォーマンスを発揮するには、自身の仕事や職場に対して愛着を持ち、積極的に仕事に取り組む意欲が必要となります。そのためには、企業としてワークライフバランスの実現を優先的に取り組むべき課題にし、実行していくことが大切です。
(参照)
厚生労働省 女性活躍推進法
http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/280108sakutei.pdf
内閣府 「ワーク・ライフ・バランスに関する個人・企業調査」の結果について
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/research/wlb_h2511/3_kouhyou.pdf
マイナビ採用 サポネット 2017年卒マイナビ大学生就職意識調査
http://saponet.mynavi.jp/enq_gakusei/ishiki/
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