妊娠で立たされる「育休」か「退職」という岐路

  • 2017.03.08

人生において、さまざまな場面で訪れる転機。その中でも妊娠は、「おめでた」ともいわれるほど、おめでたい=喜ばしい出来事のはずですが、働く女性にとっては手放しで喜べない状況になることさえあります。妊娠出産によって、「これまでのキャリアを継続させられるか」、「子育てしながら仕事の両立が可能か」などさまざまな悩みを抱える女性がいるのが現実です。また、企業側にとっても「育休取得を勧めているのに取らずに退職してしまう」、「制度上育休はあるが、まだ取得した人がいない」等の課題を抱えていることも。育休を取得せずに退職を選ぶ従業員の実態を把握することは、ワーカーズロス(人材喪失)対策には欠かせません。

 

今回から2回にわたり、「育休と退職」にスポットをあて、労使双方にとってメリットのある選択についてお話していきます。初回は、嬉しいはずの妊娠が悩みに変わる?!従業員が妊娠中に考える育休と退職の選択についてご紹介します。

 

育休を取得するつもりが思わぬ事態に?!育休取得を阻む壁とは

労働政策研究・研修機構が2016年に発表した「妊娠等を理由とする不利益取扱い及びセクシュアルハラスメントに関する 実態調査」によると、産休を取らずに退職した人は正社員が7.4%、有期契約ではフルタイムが11.4%、パートが17.7%となっています。

 

◎同じ職場の女性が敵になることも!いまだに横行するマタハラ

育休はもちろん、産休も取得せずになぜ退職を選ぶことになったのでしょうか。自分自身で退職を選択しているだけでなく、いわゆるマタハラによって退職せざるを得ない状況に追い込まれた従業員も多くいます。前出の調査では、マタハラの経験した人は21.4%。マタハラを行った人については、男性55.9%、女性38.1%となっており、同性である女性からも攻撃を受けている状況です。妊娠出産した従業員の業務をサポート(負担する)新たな人材を雇い入れることなく、残った従業員で分担する場合には、同性からのマタハラが発生しやすくなります。

*マタハラ(マタニティー・ハラスメント)とは、妊娠出産によって精神的及び肉体的な嫌がらせ行為を受けたり、職場内で不利益な扱いを受けたりすることを指します。

 

◎子育てと仕事の両立を実現している適切なロールモデルが社内にいない

初産の従業員の場合、「実際に育児経験をするのは初めて」という人が殆ど。想像はできても、実際に仕事との両立が可能なのか悩む人も少なくありません。育休から復帰して仕事も子育ても両立している「ロールモデル」が社内にいる場合とそうでない場合とでは、イメージのしやすさが全く異なります。ただし、復帰はしているが「せっかくのキャリアが活かされていない」、「不遇な扱いを受けている」、「仕事と子育てに追われて辛そう」といった状況では、「育休後、復帰して働きたい」という原動力にはなりません。

 

預け先がない?!待機児童問題はまだまだ解消されていない

2016年の「ユーキャン 新語・流行語大賞」でトップテン入りするなど、大変話題になった「保育園落ちた日本しね」。この一人の匿名の叫びは、「待機児童問題」を改めて取り上げるきっかけにもなっています。

 

◎女性活躍推進で、働く母親が増加!待機児童解消にはまだ遠い

厚生労働省が2016年9月に発表した「保育所等関連状況取りまとめ」によると、

  ▼保育所等の数:30,859か所(前年より2076か所 増)

  ▼保育所の定員数:2,634,510人(前年より102,818人 増)

となっており、保育施設の受け入れは急ピッチで進められています。しかし、大都市圏では保育需要が供給に追いつかず、待機児童解消には至っていません。首都圏、近畿圏などの企業で働く従業員にとって、保育園探しは大きな悩みの種となっています。

 

◎保活は妊娠中から!入園できるかどうか、ギリギリまでわからない

近年使われ始めた「保活」。これは保育園を探すための活動を指し、働く女性を中心に広く認知されています。厚生労働省が2016年にまとめた『「保活」の実態に関する調査の結果』によると、保活を開始した時期で最も多かったのは「出産後6か月以降23.6%」。しかし、「妊娠中15.2%」や「妊娠前4.0%」と回答した人も一定数おり、出産前に保活を始めなければ預け先の確保が難しい状況を物語っています。就業を継続するには保育施設の確保は絶対条件であり、仕事との「確実な両立」を考える人ほど早くに動き始めるといってもいいでしょう。早くに保活を始めたとしても、入園が確定するのは開始ギリギリであることが一般的。それまでは復帰できるか、不安な気持ちで過ごすことになります。

 

パートナーの協力が見込めるか?!育休と退職の意向バランスが変わる

週60時間以上就業している男性は、全体で12.9%。子育て世代である30代40代では、それぞれ16.0%と16.6%となっています(内閣府 少子化対策HPより)。こうした長時間労働は、男性が子育てや家事に取り組む時間や意欲を削ぐ要因の一つでもあります。

 

◎夫は長時間労働で頼れない?!仕事と子育てに加えて家事もこなせる?

子どもを持つ共働き夫婦を対象に、日本病児保育協会が2015年に行った調査によると、「子どもが病気にかかったときの家庭内での対応」では、母親が仕事を休むと回答した人が63.4%。父親が休むと回答した人は7.8%と、圧倒的に子育ての負担が母親に集中してしまうという現状。~正社員としてフルタイムで仕事をしながら、たったひとりで家事育児をこなす~。「家族形成コンサルティングとは~必要とされる背景~」でもご紹介した「ワンオペ育児」のような状況しか想像できなければ、「育休よりも退職」を選ばざるを得ないのかもしれません。

 

現状の職場がハードワークであったり、周囲の協力が得にくかったりする場合は、育休は取得せずにいったん退職して時間の融通が付きやすいパートなどの非正規に転職を考える従業員もいます。パートなどの場合、賃金面や就労環境などで正社員として働くよりも劣ることが多く、従業員側にはメリットが少ない選択です。また、貴重な戦力である従業員が育休という選択肢を選べずに「仕方なく退職を選ぶ」という状況は、企業にとっては大きな問題です。では、従業員が「退職ではなく育休後に復帰」というシナリオを選ぶためには、企業としてどのような支援が必要なのでしょうか。次回は、妊娠出産等のライフステージの変化によるワーカーズロスを防ぐ「企業側の支援」についてご紹介します。

 

(参照)

独立行政法人 労働政策研究・研修機構

「妊娠等を理由とする不利益取扱い及びセクシュアルハラスメントに関する 実態調査」結果(概要)

http://www.jil.go.jp/press/documents/20160301.pdf

 

厚生労働省 「保育所等関連状況取りまとめ(平成28 年4月1日)」を公表します

http://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-11907000-Koyoukintoujidoukateikyoku-Hoikuka/0000098603_2.pdf

 

厚生労働省 「保活」の実態に関する調査の結果

http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11900000-Koyoukintoujidoukateikyoku/160520hokatsu-chousa-report_1.pdf

 

日本病児保育協会 

共働き世帯の「病児保育」事情、10年前と変わらず 『子どもの病気』 母親の負担は父親の9倍

http://florence.or.jp/cms/wp-content/uploads/2016/09/20150708NLbyoujihahaoyafutan.pdf

 

総務省 労働力調査(詳細集計)2016年7~9月期平均

http://www.stat.go.jp/data/roudou/sokuhou/4hanki/dt/pdf/2016_3.pdf

 

内閣府 少子化対策 夫の協力

http://www8.cao.go.jp/shoushi/shoushika/data/ottonokyouryoku.html

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