妊娠出産での退職は「ワーカーズロス」!貴重な戦力を失わないために

  • 2017.05.17

一昔前なら、妊娠出産によって女性従業員が退職することは、ごく一般的な流れとして認知されていました。しかし、女性活躍推進が国の重要課題となっている今、「妊娠したら退職せざるを得ない」状況は避けるべき事態であり、労使双方のデメリットであるという認識になりつつあります。

前回は『妊娠で立たされる「育休」か「退職」という岐路』と題し、妊娠した従業員がなぜ退職を選択するのかという視点についてご紹介しました。2回目となる今回は、妊娠出産によるワーカーズロス(人材喪失)を避けるために企業として何をするべきか、を取り上げます。

 

妊娠出産によるワーカーズロスは、労使双方にデメリットが大きい

自社の優秀な人材がライフステージの変化によって「退職せざるを得ない」状況になることは、従業員本人だけでなく、企業にとっても大きな損失となります。

 

◎「妊娠出産で退職」、「辞めずに継続」 退職の方が企業負担は大きい

厚生労働省が2012年に作成した会議資料『働く「なでしこ」大作戦 ~女性の元気で日本再生~』では、妊娠出産によって女性従業員が退職した場合の損失額を試算しています。

  ▼妊娠出産で退職した場合

投入コスト437万円 / 節約コスト335万円 / 純コスト102万円

  ▼退職せずに代替人材活用する場合

投入コスト1087万円 / 節約コスト1004万円 / 純コスト83万円

 

継続就労は、企業にとってコスト面でメリットがあると言えます。さらに、蓄積された技術や知識を損なわずに済むという点でも大きなメリットがあります。

 

◎「辞めずに継続」、「退職して非正規で再就職」生涯所得に大きな開き

前出の会議資料では、大卒女子の退職金を含んだ生涯所得の試算も行っています。

  ▼継続就労した場合

→2億7645万円

  ▼育児休業を1年利用した場合

       →2億5737万円(逸失額:1908万円)

  ▼出産退職後、他企業に正社員として子どもが6歳で再就職した場合

       →1億7709万円(逸失額:9936万円)

  ▼出産退職後、パート・アルバイトとして子どもが6歳で再就職した場合

       →4913万円(逸失額:2億2732万円)

もちろん個々の条件によって上記の金額に変動はありますが、キャリアを継続した場合と、中断した場合とでは、生涯所得には大きな差が生まれることからも、継続就労は従業員にとっても所得面では大きなメリットになります。

 

育児と仕事を両立させるキーワードは「業務の効率化」

育児と仕事を両立させる支援策として、「短時間勤務制度」や負担の少ない部署への「配置転換」などがありますが、それよりも効果的なのは「業務の効率化」です。

 

◎長時間労働は労使双方にメリットがない

働き方改革で特に課題点として挙げられることの多い「長時間労働」。育児と仕事を両立させるうえでも大きな障害となっています。日本では「残業している=頑張っている」として評価される悪しき慣習が根強く、仕事が終わっても定時では帰りづらいということも。「帰りたいのに帰れない」状況は、生産効率を下げ、優先順位を無視した無駄な仕事を作る原因の一つ。このほか、周囲が残業していても帰らなければならない時短勤務者との間に軋轢を生じさせるなど、組織内の人間関係の悪化を招くことにもなります。

 

◎「業務効率化」を評価項目に!業務分担も見直して

業務の効率化を図り、時間内に仕事が終えられるようにしても、評価の対象とならなければ、生産性を上げるための努力は水の泡。そうしないためには、人事考課では業務の効率化についても評価対象とすべきでしょう。また、部署全体の業務内容のチェックも大切です。「重複した業務がないか」、「簡素化できないか」、「業務分担は適切か」など、従来の業務の進め方を見直し、業務改善を推進することで部署単位での生産性向上につなげることができます。

 

従業員自らの意思で「育休後復帰したい」と思わせるには

企業側が、妊娠出産後の継続就業を期待していても、従業員本人が育児と仕事の両立を望まなければ成立しません。

 

◎従業員が「自身のキャリアデザイン」を考える社内研修の実施

人生設計を意味する「キャリアデザイン」。近年では、文部科学省が「キャリア教育」として、社会に出る前に「どのような選択肢」があり、「どう生きたいのか」を考えるサポートを行っています。しかし、「自分がどのように生きたいのか」深く考える機会がないまま、漠然と就職した場合、安易な退職やスキルアップ意欲の欠如など、キャリア形成で躓く原因にもなります。このような事態を避けるためには、自分自身のキャリアデザインを考える社内研修の導入も視野に入れましょう。

 

◎「妊娠・育児体験」マネジメントポジションの視点が変わる

昨年話題になった、男性知事3名の「妊婦体験」。男性の家事参加率の低い九州と山口県の現状打開策「ワーク・ライフ・バランス推進キャンペーン」の一環として、山口県・宮崎県・佐賀県の3名の知事が7kgを超える「妊婦ジャケット」を着用して、妊婦の大変さを体感しています。このキャンペーンは男性の家事育児参加をうながすためのものですが、実際に体験したからこそ見えてくるものがあると伝えています。男性従業員や出産育児経験のない女性従業員に、妊娠や育児体験をしてもらう研修も同様の効果をもたらします。特に、実際に子どもの世話を体験することで、部下や周囲への配慮の仕方について、考え方や視点が変わったとする意見も。相手(妊娠・育児中の女性)の立場になって考えることで、「求められている支援とは何か」がみえてきます。

 

新卒採用時のミスマッチによる早期離職を避ける目的で、2016年3月から新卒採用を行う企業には「就労状態等に関する職場情報の提供」が努力義務とされました。この職場情報の中には、育休の取得者数や管理職・役員の女性割合なども含まれています。売り手市場である今、優秀な人材を採用するためにも、妊娠出産でのワーカーズロス回避は不可欠と言えるでしょう。

 

(参照)

内閣官房 第1回 女性の活躍による経済活性化を推進する関係閣僚会議 配布資料

資料7 働く「なでしこ」大作戦 ~女性の元気で日本再生~(小宮山厚生労働大臣)

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/npu/policy09/pdf/20120522/shiryo7.pdf

 

内閣府 企業が仕事と生活の調和に取り組むメリット

パンフレット:http://www.gender.go.jp/kaigi/senmon/wlb/pdf/wlb-kigyoumeritto.pdf

 

ワーク・ライフ・バランス推進キャンペーン

http://www.kyushu-yamaguchi-wlb.com/

 

国立教育政策研究所 「自分を社会に生かし、自立を目指すキャリア教育」

http://www.nier.go.jp/shido/centerhp/21%20koukou.career/koukoucareer_all.pdf

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