ワークとライフのバランスが図りやすい職場とは

  • 2016.11.29

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政府が推進する働き方改革で注目が集まる「ワークライフバランス(仕事と生活の調和)」。1回目は『働き方改革でますます注目が集まる「ワークライフバランス」』と題し、ワークライフバランスの定義や背景、課題などをご紹介しました。

2回目となる今回は、ワークとライフのバランスが図りやすい職場についてご紹介していきます。

制度だけ見直しても、ワークライフバランスは図れない

働き方改革やワークライフバランスと聞くと、2016年に話題となったトヨタのテレワーク(在宅勤務)の推進や、ユニクロ・yahoo!で導入された週休3日制などの「制度」に目が向きがちです。しかし、どれほど素晴らしい制度を策定しても、活用することを許さない企業風土では働き方は変わりません。

残業をする人ほど上司からは好印象?!個人と企業のギャップ

内閣府が2014年に行った「ワーク・ライフ・バランスに関する個人・企業調査」では、日本の企業風土を顕著に表す調査結果が出ています。

Q:「残業している人に対して、上司がどう評価していると思うか(想定)」
≪評価:頑張っている≫
1日の労働時間が10時間未満の人は、38.4%がそう思う
1日の労働時間が12時間未満の人は、47.8%がそう思う
1日の労働時間が12時間以上の人は、52.5%がそう思う
≪評価:責任感が強い≫
1日の労働時間が10時間未満は、30.4%がそう思う
1日の労働時間が12時間未満は、34.1%がそう思う
1日の労働時間が12時間以上は、38.8%がそう思う
これは個人から見た、「上司が出す評価のイメージ」ですが、残業時間が多い人ほど「上司は残業をすることにポジティブな印象を持っている」と感じています。これに対し、企業側への「残業や休日出勤をほとんどせず、時間内に仕事を終えて帰宅すること」への人事評価についての質問では、プラス評価は16.3%、考慮されないは74.0%、マイナス評価は6.2%という結果に。実際に企業側としては、マイナス評価にしていないとした回答が圧倒的であるにもかかわらず、個人イメージでは「残業は評価においてポジティブイメージにつながる」と捉えている状況が不必要な長時間労働を生み出しているとも言えます。

ワークライフバランスには、上司の理解とサポートが不可欠

企業がワークライフバランスを推進しようと思っていても、なかなか社内で浸透しない原因の一つとして挙げられるのが「上司の理解とサポートの不足」です。上司自身が残業に対しポジティブイメージを持っている場合、その部署は「残業することが当たり前」となり、本来行うべき「業務の効率化」や「人材管理」がなされず、残業が常態化していきます。
また、産休や育休などの出産育児に対する理解が乏しい上司は、自身の価値観を部下に押し付け、精神的に追い詰めるケースが見られます。こうしたマタハラ(マタニティハラスメント)やパタハラ(パタニティーハラスメント*)などのトラブルは、ワークライフバランスに逆行するだけでなく、企業としての信頼を損ないかねません。
ワークライフバランスの推進には、管理職に対する社内研修を行うなどし、部下に対する上司の在り方そのものを修正していく必要があります。
*パタニティーハラスメントとは、育児に対して行う休暇や短時間勤務などの制度活用を妨害するなどし、男性の育児参加を阻む、嫌がらせ行為のこと

ワークとライフには密接な相互作用がある

人生には、ワークとライフそれぞれが必要ですが、その2つのバランスを保つことによって、それぞれで良い結果を導き出します。

ワークとライフのバランスがもたらす影響とは

内閣府が2011年にまとめた『「ワーク」と「ライフ」の相互作用に関する調査報告書』では、仕事(ワーク)と生活(ライフ)が互いにもたらす影響「生活から仕事への肯定的なスピルオーバー(影響)」について調査しています。それによると、「プライベートでの充実感が仕事へのモチベーションにつながっている」と感じている人ほど、仕事でのパフォーマンスにプラスに作用する可能性が高いと結論付けています。

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(「ワーク」と「ライフ」の相互作用に関する調査報告書P19より転載)

≪図表21解説≫
縦軸:生活から仕事への肯定的スピルオーバー軸:ライフの充実がワークの充実に寄与すると思うかどうかを0~20の20点満点で評価(点数が高いほど寄与)
横軸:仕事のパフォーマンス(出来具合)軸:仕事の出来具合を1~11の10段階で評価(段階が高いほど良い出来)

個々人のパフォーマンスが高まれば、企業としての生産性向上につながります。ワークライフバランスの推進は、短時間でも結果を出せる組織づくりにおいて一つの有効な手段と言えるでしょう。

中小企業が取り入れやすいワークライフバランス実例

ワークライフバランスの実例として、どのようなものがあるのでしょうか。

結婚出産などで離職した従業員を再雇用

個人・企業双方にとってメリットをもたらすものとして注目したいのは、過去に結婚や出産で離職した従業員を再雇用する制度です。個人にとって、家庭環境や就労状況により、継続して勤務することが困難だった場合でも、時間経過や環境の変化等で再び就労を考えたとき、慣れた環境で仕事復帰ができるという選択肢を手に入れることができます。また企業にとっても、元従業員であれば人柄やスキルなどを把握できているので採用リスクが少ないうえに、教育や採用にかかるコストを削減することができます。

業務の効率化にウエイトを置いた人事考課

生産性の向上には欠かせない「業務の効率化」。いざ推進しようと思っても、なかなか具体的な事案は生まれてこないものです。しかし、「業務の効率化が自分の評価につながる」ことが目に見えてわかれば、従業員一人ひとりのモチベーションが高まり、より具体的な改善提案を生み出す土壌を作ります。
また、個人だけでなく部署やチーム単位で「業務の効率化」を評価する場合、業務フローを再検討し、実践的に進めることは、「組織内のコミュニケーションの活性化」という観点からも有益です。

ワークとライフのバランスが図りやすい職場にするためには、企業風土を根本から見直し、社内で働く人々それぞれが互いの環境を「受容」することが大切です。それには、経営トップ自らが受容することが求められます。
次回は、ワークとライフのバランスに優れた職場の「組織パフォーマンス」について取り上げます。

内閣府 ワーク・ライフ・バランスに関する個人・企業調査(2014年)

内閣府 『ワーク』と『ライフ』の相互作用に関する調査

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