働き方改革でますます注目が集まる「ワークライフバランス」

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現在の政府が早期に解決すべき課題として捉えている「働き方改革」。従来のような長時間労働やライフステージの変化によってキャリアプランの変更を強いる原因ともなる「社会や企業の風土そのもの」を変革していくことが求められています。こうした動きの中で注目されているのが「ワークライフバランス(仕事と生活の調和)」です。

今後ますます注目が集まるワークライフバランスにスポットを当て、その背景や個人・企業におけるメリットなど、調査統計資料を基に、3回にわたって取り上げていきます。

ワークライフバランスとは何か

大手企業を中心に、「ワークライフバランス」という言葉は浸透しつつありますが、そもそもワークライフバランスとはどのようなものなのでしょうか。

根強く残る「男性は仕事(ワーク)、女性は家庭(ライフ)」の呪縛

内閣府が2016年に行った「男女行動参画社会に関する世論調査」によると、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべき」とする考えに賛成とした回答(どちらかと言えば賛成を含む)は40.6%。反対とした回答(どちらかと言えば反対を含む)が54.3%となり、反対が上回りましたが、まだまだ性差による役割分担意識が根強く残っています。社会情勢や経済環境などが変化し、女性の社会進出が進むようになっても、その風土を改革するには至っていないのが実情です。

仕事・生活双方で充実した生き方を「自ら」が選択できる社会

高度成長期以降の「長時間・がむしゃらに働く」労働スタイルは、少子化問題や女性のキャリア断絶などのさまざまな弊害をもたらしてきました。こうした中、2007年12月に行われた官民トップ会議において「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章」及び「仕事と生活の調和推進のための行動指針」が策定されました。

仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章では、仕事と生活の調和が実現した社会を、
「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」と定義づけています。

誤解されやすいワークライフバランス

ワークライフバランスという言葉は、正しく認知されているとは言えません。

仕事をセーブすることがワークライフバランスではない

ワークライフバランスと聞くと、一人ひとりの業務負担を軽減し、プライベートを充実させることだと思っている人は少なくありません。しかし、前記の仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)憲章で定義づけされているとおり、「仕事上の責任を果たす」ことが前提であり、業務の効率化を図りながら、一定の時間内で成果を上げることが求められます。

ベストなワークライフバランスは個々人により異なる

子育て支援や女性活躍推進のツールとして認識されがちですが、ワークライフバランスは未婚既婚、子どもの有無にかかわらず、全員が対象となります。また、仕事中心の生活やプライベートを基準とした仕事選びなど、どちらかに比重を置く考えを否定するものでもありません。働く人だれもが、仕事によってやりがいや充足感を得つつ、柔軟性に富んだ多様な生き方の選択を可能にすることがワークライフバランスの根幹になります。

ワークライフバランスに実現に向けた課題とは

ワークライフバランス推進のための行動指針では、2020年までに目指すべき数値目標を設定しています。

順調とはいかない数値目標

内閣府の「仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)レポート2015」によると、25歳から44歳までの女性を除く就職率は順調に目標をクリアしているものの、そのほかは実現させるには厳しい状況が続いています。特に注目したいのは、以下の3つです。

  • 男性の育児休業(育休)取得率
    → 2020年目標値:13%/2015年:2.65%※
    ※雇用均等基本調査より(前記レポートでは2014年値:2.30%)
  • 6歳未満の子供を持つ夫の育児・家事関連(1日あたり)
    → 2020年目標値:2時間30分/2014年最新値:1時間7分
  • 時間当たり労働生産率の伸び率
    → 2020年目標値:実質GDP成長率を上回る水準(2%以上)/2014年最新値:0.9%

これは、日本では性差による役割分担意識が個人・企業ともに根強いことや、生産性よりも周囲とともに長く社内に留まるという「誤った協調性」が評価される傾向が原因として挙げられます。

第1子妊娠出産での離職女性は、正規雇用ではなく非正規雇用を望む

前記のレポートでは「順調ではない」と位置付けられていた「第1子出産前後の女性の継続就業率」は、最新の「第15回出生動向基本調査」によると、2020年目標値:55%に対し、2010~2014年最新値は53.1%と上昇しています。しかし、妊娠出産で離職を余儀なくされ、無職となった場合、再就職時に希望する雇用形態は、正規職員希望7.7%であるのに対し、パートなどの非正規雇用希望は87.5%と、圧倒的に非正規雇用を望む調査結果が出ています。そこには、男性側の「育児や家事を受け持つ意識の低さ」があり、女性にしわ寄せが行っている現状が見え隠れしています。

日本でも少しずつ認知されつつあるワークライフバランス。しかし、真の意味で成功したと言える企業はまだまだ少ないという現実があります。次回は、ワークとライフのバランスが図りやすい職場について取り上げます。

内閣府 男女行動参画社会に関する世論調査
http://survey.gov-online.go.jp/h28/h28-danjo/zh/z13.html

内閣府 仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス憲章)【PDF】
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/pdf/charter.pdf

内閣府 仕事と生活の調和とは
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/towa/index.html

内閣府 仕事と生活の調和レポート2015【PDF】
http://wwwa.cao.go.jp/wlb/government/top/hyouka/report-15/h_pdf/gaiyou.pdf

厚生労働省 平成27年度雇用均等基本調査【PDF】
http://www.mhlw.go.jp/toukei/list/dl/71-27-07.pdf

厚生労働省 第15回出生動向基本調査【PDF】
http://www.ipss.go.jp/ps-doukou/j/doukou15/NFS15_gaiyou.pdf

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